物語鉱山「Remains of Tellers」ゲームブックイントロ風解説


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 これは百合文芸小説コンテスト2の投稿作が2000作を越え、埋もれる物語が沢山あって勿体ないと、VRインターフェイスを絡めてキュレーションする方法はないかと考察したもので、せっかくなのでゲームブック風にまとめてみました。時限イベントだとより密度が高まって楽しいかな、と思う。

 書き手(創作者)

 視聴者(消費者)=発掘者=販売者

 表現者

 の三すくみ構造になっている所が肝で、それを仮想的な経済システムで循環させることを軸とする。

 

:君はカントリーサイド風の村の入り口に立っている。
 

:左右は馬車置き場、正面には広場があって屋台が立ち並び、一番奥に尖った岩肌の山がそびえている。これが、この村を象徴するRoT鉱山である。

:RoT鉱山は、無数の創作者が書き捨てた物語の累積が化石化してできた山だ。

:RoTの村は、その物語を掘って暮らす者たち、そして、掘り出された物語を演じ、輝かせる者たちの根拠地なのだ。そうちょうど、ダイヤモンド鉱山の麓に、宝石技師たちの村があるようなものだと思えばよい。この村に直接物語を買い付ければ、自分の好みの物語と出会い、安価に手に入れることができるだろう。

:君は手元にいくらかのお金を持っている。それはこの村だけで使える通貨だ。

:君はその通貨で、朗読をきいたり、お芝居を観たり、或いは演者として物語を買い付けたり。物語の執筆者や表現者に直接寄付したりすることができる。

:君は村に足を踏み入れた。

:左端には大きな休憩用テントがある。その中では演技や朗読は禁止され、ただゆったりと異国風の敷布に体を横たえながら時間を過ごすことができる。

:休憩用の大テントの右隣には、個人用の演技屋台がある。2~3畳の広さのシンプルな屋台がずらりと並ぶ仲見世通りで、君は個人表現者たちにお金を払い、彼らのパフォーマンスを堪能できるだろう。屋台に入らず、あちこちの屋台から漏れ聞こえる表現者たちの声を聴いて、にぎやかさに浸るのも良いだろう。

:正面には、大きな鐘楼がある。この鐘は、時間が不連続なこの村にはなくてはならないものだ。

:鐘が鳴ってしばらくすると、屋台の表現者たちはいったん全員退出せねばならない。そうしてまた鐘が鳴るとき、早い者勝ちで自らの屋台を確保しに行かねばならないのだ。特に、個人用屋台は無料で借りることができる。君が駆け出しの表現者なら、まずはとっておきの物語を携えて、ここを狙ってファンを集める所から始めるといいだろう。その際自動ポップアップ看板に、作者と演者の名前、作品名、そして各々の、他のアカウントなどプロフィール情報をきっちり書き込むべきだ。

:鐘楼の下は噴水になっており、荒涼としたこの周辺の岩場に一服の涼しさを与えている。

:君は、噴水の周辺のさほど広くない石畳、或いは展望台のベンチ周辺、そして屋根の下でのみ自らの声が音になるのに気づくだろう。それ以外の場所では君の声は言葉として表示される。誰も彼もが、そこかしこで表現を始めてしまわないようになっているのだ。

:右手奥には、大きな夕日と荒涼とした山並みを見渡せる展望台がある。
:右手前には、30人程度を収容できる中規模テントがある。個人用屋台よりも、より自信に満ちたショーが繰り広げられるはずだ。
:鐘楼を越えて正面の山肌突き当りには、1000人規模の大ステージがある。表現者の者たちは、中規模テント、そしてこの大ホールで演じることを目指すと良いだろう。借りるためには相応にお金がかかるので、頑張って稼ぐことだ。十分なお金があれば、十分なファンがいると考えていいだろう。

:さて、あくまでも視聴者である君は、ふらりと立ち寄った個人屋台で朗読を堪能した。しかしお金が底をついてしまった。それに、君は喋るのがあまり得意な方ではない。そんな時は、集落の一番左奥へ行くと良いだろう。そこではRoT鉱山の坑道の入り口が君を待っている。

:RoT鉱山に入って、物語を発掘するのだ。RoT鉱山の中は時空が歪んでいて、古代の書き手たちが今まさに物語を次々と執筆している所だ。

:君は無数の物語から、掘り出し物を発見するのだ。そして、お気に入りの物語を表現者たちに売ってみよう。気に入ってもらえれば、君の選んだ物語を彼らは買い、翌日にでも演じられるだろう。

:上手く行かない場合も、諦めず交渉してみよう。この作品のどこが良いのかを熱く語れば、きっと通じるだろう。執筆者保証を付ける事も忘れてはならない。

:もちろん、君自身の審美眼も試される。いい物語を発掘できるよう、腕を磨こう。

:ちなみに、古代の書き手として参加をしたいと思った君は、迷わず筆を執ってみよう。

:もし自分の作品を、表現者が舞台にかけた場合、時空を超えて君の懐には大金が転がり込むだろう。選ばれる良き物語を書けるよう切磋琢磨すれば、富豪も夢ではない。勿論、時空を往復しながら、自ら書いた物語を発掘し、売りに行くことも可能だ。

:だがもし、それらの方法がいずれも上手く行かない場合。君は途方に暮れるしかないのだろうか。
:噴水の縁石に座り込んでうなだれている君の耳に、ふと誰かの声が聞こえてくる。それは、流しの表現者だ。発音許可エリアに現れる彼らは、今日は屋台を抑え得なかったもの、或いは腕試し、或いは異様な楽天家などだろう。完成度は低いかもしれないが、君はそれらの調べを聞きながら過ごすことができるだろう。気に入ったら君は彼らや、物語の作者に寄付することもできる。

:もう一つ奥の手がある。それは、大ステージの脇の階段から山の斜面に展開された、物語の買い付け場と、練習場が一体になった第二広場へ行くことだ(君が良い物語を発掘した時も、ここを利用すると効率よく物語を吟味してもらえる)

:そこでは、表現者たちがまだ未完成の舞台を練習中かも知れない。無論、練習は無料で見る事ができるので、君はぼんやりとその賑やかさの中で、拙いが明日の大ステージにのるかも知れない作品を一早く知る事ができるかもしれない。

:日が暮れたら、君は展望台でゆったりと過ごすか、或いは休憩用テントで深い眠りにつくと良いだろう。

:さあ、古代の書き手たちの遺産、RoT鉱山で君の宝物を発見し、それを腕のいい表現者たちに輝かせてもらおう。
 
 


 ちなみに、今回百合文芸小説コンテストには2作投稿していますので、よろしくお願いします。

 

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